中小M&Aの手続きの流れ 徹底ガイド(事前相談からPMIまで)【非公式】
更新日:2026-07-25
本アプリ「中小M&A資格試験 対策」は運営団体非公式の対策アプリです。本記事は公式の過去問ではなく、中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」「中小PMIガイドライン」「専門人材スキルマップ」等に基づき作成した非公式の解説であり、教育・学習目的で提供しています。試験の実施団体とは一切関係ありません。
中小M&Aの手続きには、事前準備から最終契約、クロージング後のPMIまで、多くの工程があります。本記事は、その一連の流れを工程ごとに一段深く解説します。
実際の手続は案件ごとの事情により、一部の工程が省略されたり、順序が前後したりすることがあります。個別の案件の進め方については、必ず仲介者・FAや士業等専門家にご相談ください。
中小M&Aの手続きの流れ(全体像)
中小M&Aガイドライン第3版は、中小M&Aにおける一般的な手続の流れ(フロー)を示しています。大きく、事前準備、意思決定、仲介者・FAの選定と契約締結(又は自ら手続を進める場合)、マッチング、交渉・基本合意の締結、デュー・ディリジェンス(DD)、最終契約の交渉・締結、クロージング、クロージング後(PMI)という順序で進むとされています。
以下、この流れに沿って、それぞれの工程で何が行われるかを解説します。
STEP1 中小M&Aに向けた事前準備
譲り渡し側経営者が中小M&Aを実行すべきかどうかの意思決定を単独で行うことは容易ではないとされ、まずは早期に身近な支援機関へ相談した上で、支援機関による助言の下で事前準備を行うことが望ましいとされています。相談先としては、商工団体、士業等専門家(公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士等)、金融機関、M&A専門業者のほか、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センター等が挙げられています。相談の際には、直近3年分の税務申告書・決算書(損益計算書・貸借対照表を含む)・勘定科目内訳明細書の写しを用意すれば十分とされ、これら以外の詳細な資料は支援機関からの指示を受けてから準備すれば足りるとされています。
あわせて、親族内・社内に後継者候補がいないこと(後継者が不在であること)の確認も必要とされています。具体的には、親族内承継を実施しないことにつき身近な親族(特に子や兄弟)から了解を得ておくこと、社内に後継者候補がいないこと(従業員承継が不可であること)を確認しておくことが求められています。
また、譲り渡し側経営者は、引退後のビジョンを含む希望条件を事前によく考えておく必要があるとされています。
STEP2 仲介者・FAの選定と契約締結
中小M&Aの進め方は、大きく、仲介者・FAを選定する場合と、仲介者・FAを選定せず工程の多くの部分を自ら行う場合の2パターンに分類され、両者が重なり合うケースもあるとされています。仲介者・FAを選定する場合、その選定に当たっては、業務形態や業務範囲・内容、契約期間、報酬(手数料)体系、M&A取引の実績、利用者の声等を確認した上で、複数の仲介者・FAの中から比較検討して決定することが重要とされています。
仲介契約・FA契約の締結にあたって確認すべき主なポイントとして、業務形態(仲介又はFA)、業務範囲・内容、手数料の体系等、秘密保持、専任条項、直接交渉の制限に関する条項、テール条項、責任(免責)に関する条項が挙げられています。
仲介者・FAの選定・契約の締結や、契約締結後に受けた助言の内容の妥当性の検証等にあたり、他の支援機関から意見や助言を求めること(セカンド・オピニオン)は、依頼者の意思決定を後押しし、安心してM&Aを進める上で有効であるとされています。
STEP3 マッチング(ノンネーム・企業概要書・秘密保持契約・意向表明書)
マッチングを具体的に進めるにあたり、仲介者・FAは通常、まず譲り渡し側を特定できない内容のノンネーム・シート(ティーザー)を、数十社程度にまで絞り込んだリスト(ロングリスト)内の企業に送付し打診するとされています。その上で、関心を示した候補先から譲り受け側となり得る数社程度をリスト(ショートリスト)化し、これらとの間で秘密保持契約を締結した上で、仲介者・FAが譲り渡し側についての企業概要書を譲り受け側の候補先に交付し、その後のマッチング支援等を行うとされています。
マッチング支援を単独の支援機関に依頼するか、複数の支援機関に依頼するかについては、それぞれ利点・留意点があるとされています。専任条項や秘密保持に関する条項を設けた場合には、他の支援機関に重ねてマッチング支援を依頼することが困難となることが通常であるとされている点に留意が必要です。
意向表明書とは、譲り渡し側が譲り受けの際の希望条件等を表明するために提出する書面をいい、基本的には法的拘束力を持たないことが多いとされています。デュー・ディリジェンス(DD)に進む意向を表明する書面を第一次意向表明書、DDの結果を踏まえて最終的な希望条件等を記載する書面を第二次意向表明書(最終意向表明書)等と称することがあるとされています。例えば、債務超過企業において譲り受け側(スポンサー)を選定する場合に、その過程の透明性・公正性を確保するため入札手続を実施するケース等において、意向表明書が用いられることがあるとされ、すべての案件で必ず用いられる書面ではありません。
STEP4 交渉と基本合意の締結
交渉の進め方には、譲り渡し側・譲り受け側の経営者同士の面談(トップ面談)の時期や方法も含め、様々な形態があるとされています。トップ面談は、譲り受け側の経営理念・企業文化や経営者の人間性等を直接確認するための場であり、その後の円滑な交渉のためにも重要な機会であるとされています。交渉の際には、中小M&Aにおける希望条件を明確化し、可能な限り優先順位を付し、特に絶対に譲歩できない点を固めておくことが望ましいとされています。
当事者間の交渉により概ね条件合意に達した場合には、最終契約におけるスキーム(株式譲渡や事業譲渡といった手法)、デュー・ディリジェンス(DD)前の時点における譲渡対価の予定額や経営者その他の役員・従業員の処遇、最終契約締結までのスケジュールと双方の実施事項や遵守事項、条件の最終調整方法等、主要な合意事項を盛り込んだ基本合意を締結するとされています。
ただし、資金繰り等の関係でクロージングを急ぐ必要がある場合には、基本合意を締結せず、最低限の秘密保持契約の締結のみに留めて、最終契約締結に直接進むケースもあるとされています。
STEP5 デュー・ディリジェンス(DD)
デュー・ディリジェンス(DD)は、主に譲り受け側が、譲り渡し側の財務・法務・ビジネス(事業)・税務等の実態について、FAや士業等専門家を活用して調査する工程であり、譲渡対価の金額の精査や、判明した実態を踏まえて更に事業の改善を行うこと等の目的で行われるとされています。どの調査を実施するかについては、譲り受け側の意向に従うこととなるとされています。
デュー・ディリジェンス(DD)は、想定し得るリスク全般について調査することもあれば、対象事項等を限定して簡易な形で行うこともあり、調査の密度は様々であるとされています。譲り渡し側は、調査が十分になされない場合には、最終契約において負う各種義務(表明保証の範囲や補償額・補償期間等)の負担の増加に繋がりうる点に留意が必要であるとされています。
STEP6 最終契約の交渉・締結
デュー・ディリジェンス(DD)で発見された点や基本合意で留保していた事項について再交渉を行い、最終的な契約を締結する工程です。仲介者・FAや士業等専門家によるアドバイスに納得できず不安がある場合には、調印前に契約内容に関する意見を他の支援機関に求めること(セカンド・オピニオン)も有効であるとされています。
中小M&Aの実務においては、株式譲渡か事業譲渡の手法が選択されることが多いとされています。株式譲渡は、譲り渡し側の法人格に変動がないため手続は比較的シンプルである一方、簿外債務・偶発債務リスクが比較的高くなりやすく、より詳細なDDが実施される傾向にあるとされています。事業譲渡は、譲渡の対象となる財産(承継対象財産)を選択でき、譲り渡し側の法人格から切り離すことができるため簿外債務・偶発債務リスクを比較的遮断しやすい一方、承継対象財産の特定や対抗要件具備、許認可の取得等の作業が必要になるとされています。
最終契約で取り決める主要な内容としては、譲渡対象、譲渡時期、譲渡対価、支払時期・方法、経営者・役職員の処遇、経営者保証の扱い、表明保証条項、補償条項、クロージングの前提条件、競業避止義務、契約の解除事由等が挙げられています。
STEP7 クロージングとクロージング後(PMI)
クロージングは中小M&Aの最終段階であり、株式等の譲渡や譲渡対価の支払を行います。譲り受け側から譲渡対価の全部又は一部が確実に入金されたことを確認することが必要とされています。事業譲渡の手法を選択し、承継対象財産の中に不動産が含まれる場合には、クロージング後速やかに登記手続を行う必要があるため、クロージングにおいて登記必要書類を授受することが通常であるとされています。
クロージングを迎えた後も、譲り渡し側経営者はPMI(M&A実行後における事業の統合に伴う作業)として、譲り受け側による円滑な引継ぎ等に向けて誠実に対応する必要があるとされています。共通の引継ぎ作業として、中小M&Aクロージングについての役員・従業員や取引先等に対する報告、リース契約・賃貸借契約・金銭消費貸借契約等に関する名義変更・経営者保証解除・(連帯)保証人変更、業務フローの引継ぎ・業務管理体制の構築等が挙げられています。株式譲渡の場合は代表者変更のための株主総会・取締役会や登記手続、事業譲渡の場合は売掛金の振込先口座の変更等、手法に応じた作業も必要とされています。
まとめ
中小M&Aの手続きは、事前準備、意思決定、仲介者・FAの選定と契約締結、マッチング、交渉・基本合意の締結、デュー・ディリジェンス(DD)、最終契約の交渉・締結、クロージング、クロージング後(PMI)という一連の工程で進むとされています。
各工程には確認すべきポイントが多く、仲介者・FAや士業等専門家といった支援機関のサポートを受けながら進めることが望ましいとされています。
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よくある質問
中小M&Aの手続きは必ずこの順番で進みますか?
案件ごとの事情により、一部の工程が省略されたり、順序が前後したりすることがあります。例えば、クロージングを急ぐ必要がある場合には、基本合意を締結せず最終契約締結に直接進むケースもあるとされています。
意向表明書は必ず提出しますか?
いいえ。すべての案件で必ず用いられる書面ではなく、例えば債務超過企業のスポンサー選定で入札手続を実施するケース等において用いられることがあるとされています。
基本合意書に法的拘束力はありますか?
基本合意は主要な合意事項を盛り込んだ書面ですが、一部の条項(秘密保持等)を除き、原則として法的拘束力を持たせないことが多いとされています。
株式譲渡と事業譲渡はどちらが選ばれますか?
中小M&Aの実務においては、株式譲渡か事業譲渡の手法が選択されることが多いとされていますが、それぞれメリット・デメリットがあり、案件の状況に応じて選択されます。
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- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p20(意向表明書の定義))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p34-35(中小M&Aに向けた事前準備))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p36(意思決定))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p37-41(仲介者・FAの選定及び仲介契約・FA契約の締結))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p42-43(仲介者・FAの比較/セカンド・オピニオン))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p44(バリュエーション))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p44-46(譲り受け側の選定・マッチング))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p46-47(交渉))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p47(基本合意の締結))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p47-48(デュー・ディリジェンス(DD)))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p48-49(最終契約の交渉・締結))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p56(クロージング))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p56-57(クロージング後(ポストM&A)))