廃業とM&Aはどう比べる?第三者承継を選ぶときの判断材料【非公式】
更新日:2026-11-04
本アプリ「中小M&A資格試験 対策」は運営団体非公式の対策アプリです。本記事は公式の過去問ではなく、中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」「中小PMIガイドライン」「専門人材スキルマップ」等に基づき作成した非公式の解説であり、教育・学習目的で提供しています。試験の実施団体とは一切関係ありません。
後継者が見つからないまま経営者が年齢を重ねると、「会社をたたむ(廃業する)か、社外の第三者に引き継いでもらう(中小M&A)か」を考える場面が訪れます。どちらを選ぶかは、従業員や取引先、経営者ご自身の生活にも長く影響する判断です。
本記事は、中小M&Aガイドライン第3版の記載をもとに、廃業と第三者への承継を比べるときに押さえておきたい判断材料を非公式に整理したものです。どちらか一方を勧めるものではなく、比べる際の視点を並べることを目的としています。
実際にどの道を選ぶか、どう進めるかは会社の状況によって大きく異なります。税務・法務や債務の整理にかかわる判断は、必ず税理士・弁護士等の士業等専門家や、事業承継・引継ぎ支援センター等の公的な相談窓口にご確認ください。
ガイドラインでの位置づけ:後継者がいない会社の選択肢
事業承継では、まず経営者の親族の中から、いなければ自社の役員や従業員の中から後継者候補を探すことが多いとされています。親族にも社内にも候補がいない会社では、社外の第三者に引き継いでもらう以外に事業承継の道がなく、それが実現しなければ廃業を余儀なくされる、というのがガイドラインの整理です。中小M&Aは、こうした会社が第三者への承継のためにM&Aの手法を使うものと位置づけられています。
ガイドライン第1章は主に後継者不在の会社(譲り渡し側)の目線で書かれ、中小M&Aを検討する経営者の背中を押すことを目指すとされています。一方で、廃業を希望する事業者向けの支援の紹介や、参考資料8「円滑な廃業を支援する施策」への案内も置かれており、廃業も現実の選択肢の一つとして扱われています。
比べる軸1:従業員・取引先・地域への影響
事業を第三者に引き継いで存続させれば、従業員の職場が残り、雇用の受け皿を守ることにつながります。仕入先や得意先との取引が続けば、地域のサプライチェーンを保つことにも役立つとされています。反対に、何の対策もとらずに廃業すると、特に地域の中核となる規模の会社では、多くの雇用が失われ、地域の取引の流れに大きな穴があくおそれがあると指摘されています。
気持ちの面では、M&Aを「後ろめたい」「従業員に申し訳ない」と感じる経営者もいるとされます。これに対してガイドラインは、中小M&Aはそれまで築いてきた事業の価値を第三者が評価して初めて成り立つものであり、後ろめたいことではなくむしろ誇らしいことだ、という見方を示しています。
比べる軸2:自社の事業に引き継ぐ価値があるか
「うちの会社を引き継ぎたい相手などいないだろう」と考え、M&Aを検討すらしないケースが多いとガイドラインは指摘しています。しかし譲り受け側が評価するのは、収支や財務、規模、保有不動産といった分かりやすい特徴に限られません。技術力、取引先との関係や商流、従業員、地域や業界での知名度・信用、業歴、店舗網、特許などの知的財産やノウハウ、許認可なども評価の対象になり得るとされています。
そのため、小規模であったり、赤字や債務超過であったりしても、引き継ぎたいと申し出る相手が現れることは大いにあり得るとされます。帳簿の上では債務超過でも、資産・負債を時価で見直すと実態は資産超過だと分かるケースもあるとされています。経営者には当たり前すぎて気付きにくい強みを見つけるためにも、まずは早めに支援機関へ相談してみることが望まれています。
比べる軸3:判断の時期と資金繰り
ガイドラインは早い判断の大切さを強調しています。希望する相手とのマッチングには、個別に異なるものの数か月から1年程度の時間がかかると見込まれるため、早めに動き出すことが重要とされています。早く検討して実現すれば、雇用や地域の取引を守れるだけでなく、経営者の手元に残る譲渡対価が多くなるケースもあるとされています。
一方で、こうした判断は日々の忙しさで後回しになりがちで、決断が遅れるほど中小M&Aの選択肢は狭まる傾向にあるとされます。業績が良くない会社では資金繰りが尽きて身動きが取れなくなることもあり、判断が遅れた結果、廃業の費用すら用意できなくなるケースもあると注意が促されています。ガイドラインが挙げる事例の見出しにも、適切な時期に決断していればより良い条件で譲り渡せた事例や、着手が遅れて資金繰りが尽き、不成立のまま廃業した事例が含まれています。
全部か無しかではない:一部の事業だけを引き継ぐ道
会社全体として続けるのが難しくても、利益の出ている店舗など一部の事業だけを早めに譲り渡し、その部分を存続させられる場合があるとされています。ガイドラインの事例の見出しにも、事業の一部をM&Aで譲渡して廃業の費用をまかなった事例が挙げられています。
弁護士向けの記載では、完全に廃業するのではなく黒字の一部事業だけを譲り渡すことが、雇用の受け皿をできる限り確保し、受け取る対価を大きくすることにもつながると整理されています。残りの事業をたたむ場合には、その対価を廃業の費用に充てられる可能性もあるとされ、その事業に携わってきた役員・従業員に引き継ぐという選択肢もあり得るとされています。最初から全面的な廃業だけを考えるのでなく、資金繰りの面でも現実的なら、一部の譲渡も含めて最良の道を検討することが望ましいとされています。
債務超過・経営者保証がある場合に確かめたいこと
ガイドラインは、事業の価値は最終的に譲り受け側の評価で決まるものであり、債務超過だからといって廃業しか選択肢がないとは限らないとしています。ただしこの局面では、資金繰りの具体的な把握や手続の選び方といった専門的な検討が欠かせません。債権者との間で債務の減免などの交渉が必要になる場合には、中小企業活性化協議会や事業再生を専門とする弁護士等と連携することも重要とされています。
知っておきたい論点として、事業を譲り渡す対価が不当に低いと、債権者などから取引を取り消されるといったリスクがあり、少なくとも破産したと仮定した場合の価値を相当程度上回る金額が求められるとされています。債務の減免を受ける場合の課税にも注意が必要とされています。
経営者が会社の借入れの保証人になっている場合、その扱いは廃業でも承継でも大きな関心事です。ガイドラインは「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、保証債務の免除を受けて一定の資産を手元に残せる方策を検討する必要があるとしています。いずれも個別の事情で結論が変わるため、早めに専門家へ相談しましょう。
相談先と、相手が見つからないときの道筋
公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターでは、中小M&Aだけでなく、廃業を希望する事業者の事業や事業用資産などの「経営資源の引継ぎ」についても相談を受け付け、M&Aの提案や相手探し、事業の一部譲渡を含む支援を行っているとされています。インターネット上で相手を探せるM&Aプラットフォームについても、近いうちに廃業を考えている小規模な事業者が、廃業以外の道も現実にあり得ると考えて活用を検討することが望まれるとされています。
候補先がなかなか見つからない場合は、支援機関に理由を確かめて分析したうえで、活動を続けるかどうかを検討します。従業員承継など他の方法も難しく、やむを得ず廃業する場合には、事業で使ってきた事業用資産などの経営資源を引き継ぐ検討を始めることが望まれるとされ、相手探しをいつ打ち切るかは仲介者・FAと話し合って決めることとされています。
試験で問われやすい誤った理解
「債務超過の会社は廃業するしかない」という理解は誤りです。ガイドラインは、事業の価値は譲り受け側の評価で決まり、債務超過でも中小M&Aが実現する可能性があるとしています。「M&Aは会社の全事業をまとめて譲るもの」という理解も正確ではなく、黒字の一部事業だけを譲り渡す道も示されています。
「判断は業績が悪化してからでも間に合う」という理解も適切ではありません。決断が遅れるほど選択肢は狭まり、廃業の費用すら用意できなくなるケースもあるとされています。また、相手が見つからず廃業する場合でも、経営資源の引継ぎを検討することが望まれるとされている点を押さえておきましょう。
まとめ
廃業と第三者への承継を比べるときは、従業員・取引先への影響、自社の事業に引き継ぐ価値があるか、判断の時期と資金繰り、一部の事業だけを引き継ぐ道、債務や経営者保証の扱いを順に確かめると整理しやすくなります。どちらを選ぶ場合でも、早めに事業承継・引継ぎ支援センター等や士業等専門家に相談し、自社に合った道を検討することが大切です。
後継者がいない会社がM&Aを検討し始める段階や、最初に相談する先についての理解は、当サイトの対策アプリの演習問題(解説付き)でも確かめられます。
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よくある質問
赤字や債務超過でも、M&Aで引き継いでもらえることはありますか?
可能性はあるとされています。ガイドラインは、小規模・赤字・債務超過であっても、譲り受け側が事業の価値を認めて引き継ぎを申し出ることは大いにあり得るとしています。実現するかどうかは相手方の評価や資金繰りなど個別の事情によるため、支援機関や専門家にご確認ください。
廃業を考えている段階でも、相談できる公的な窓口はありますか?
事業承継・引継ぎ支援センターでは、廃業を希望する事業者の経営資源の引継ぎについての相談にも対応しているとされ、M&Aの提案や相手探し、事業の一部譲渡を含む支援が行われています。
M&Aを検討し始めてから相手が決まるまで、どのくらいかかりますか?
個別に異なりますが、ガイドラインは、希望する相手とのマッチングに通常は数か月から1年程度かかると見込んでいます。そのため、早めに判断して動き出すことが重要とされています。
事業の一部だけを譲り渡して、残りを廃業することはできますか?
ガイドラインは、利益の出ている店舗など一部の事業だけを譲り渡す選択肢を示しており、残りの事業をたたむ場合には譲渡の対価を廃業の費用に充てられる可能性もあるとしています。具体的な手法や税務・債務の扱いは、士業等専門家にご確認ください。
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- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p13(はじめに(初版):対策を講じない場合の廃業と関係者への影響))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p27(後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p28(中小M&Aの事例:意思決定のタイミング・廃業を予定していた事例・不成立の事例))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p29(基本的な認識の変化・従業員・取引先等への影響の緩和))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p30-31(譲り受け側から見た事業の魅力・早期判断の重要性))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p46(候補先の紹介が受けられない場合の対応・経営資源の引継ぎ))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p57-58(M&Aプラットフォーム:廃業を検討している小規模な事業者による活用))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p62(事業承継・引継ぎ支援センター:経営資源の引継ぎ・円滑な廃業を支援する施策への案内))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p120(税理士:債務超過企業に対する中小M&A支援))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p126-129(弁護士:債務超過企業に対する中小M&A支援・適正対価・一部事業譲渡・税務・経営者保証))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p133(参考資料一覧:円滑な廃業を支援する施策))