中小M&Aガイドラインとは?初版から第3版までの成り立ちと構成【非公式】
更新日:2026-10-05
本アプリ「中小M&A資格試験 対策」は運営団体非公式の対策アプリです。本記事は公式の過去問ではなく、中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」「中小PMIガイドライン」「専門人材スキルマップ」等に基づき作成した非公式の解説であり、教育・学習目的で提供しています。試験の実施団体とは一切関係ありません。
中小M&Aガイドラインは、中小企業庁が示している、中小企業の第三者への事業引継ぎ(M&A)に関する指針です。本記事は、同ガイドラインの初版・第2版の「はじめに」と「本ガイドラインの構成等」の記載をもとに、どのような背景で作られ、どう版を重ねてきたのか、どのような構成で誰を対象としているのかを非公式に解説します。
本記事は試験団体・中小企業庁とは関係のない非公式のまとめです。各論点の詳細や最新の記載は、必ず原典(中小M&Aガイドライン)でご確認ください。
初版が作られた背景:後継者不在と廃業の問題
初版の「はじめに」は、令和2年(2020年)3月に策定された時点の見込みとして、令和7年(2025年)までに、中小企業・小規模事業者の経営者のうち、平均引退年齢である70歳を超える人は約245万人となり、その約半数にあたる約127万人は後継者が未定になるとの見込みを示しています。なお、これはあくまで初版策定時(2020年)の見込みであり、現在の実態を示す数値ではありません。
後継者不在の中小企業が将来の見通しが立たないまま何の対策も講じなければ、廃業せざるを得ないとされています。その場合、従業員の雇用が失われたり、取引の断絶によりサプライチェーンに支障が生じたりして多くの関係者に混乱を招き、地域経済にも悪影響が生じるおそれがあるほか、優良な経営資源が活用されないまま失われることは日本経済にとっても大きな損失になり得ると指摘されています。
「事業引継ぎガイドライン」の全面改訂としての初版
初版は、平成27年(2015年)3月に策定された「事業引継ぎガイドライン」(初版の「はじめに」では「旧ガイドライン」と呼ばれています)を全面的に改訂するものとして位置づけられています。旧ガイドラインの策定から約5年が経つ中で、後継者不在の中小企業の事業をM&Aにより社外の第三者が引き継ぐケースは増えており、M&Aも事業承継の手法の1つとの認識が広がり始めていたとされています。
一方で、社外の第三者が事業を引き継ぐことに抵抗感のある経営者は多く、M&Aに関する知見や経験がない場合も多いため、M&Aによる引継ぎをせずに廃業に至るケースも多いと考えられると述べられています。こうした経営者の背中を押し、M&Aを適切な形で進めるための手引きを示すとともに、これを支援する関係者がそれぞれの特色・能力に応じて適切にサポートするための基本的な事項を併せて示す、というのが初版の趣旨です。
第2版で加わったもの:支援機関登録制度とM&A専門業者の契約・手数料
第2版の「はじめに」によると、初版の策定後、令和3年4月に「中小M&A推進計画」が策定され、同年8月にはこれに基づいて「M&A支援機関登録制度」が創設されました。この制度では、登録を希望する支援機関に中小M&Aガイドラインの遵守宣言を求めており、M&A専門業者をはじめとする支援機関に、ガイドラインに記載された行動指針の普及・定着を図ってきたとされています。
その一方で、中小M&Aの市場が急速に拡大し、マッチング支援やM&Aの手続進行に関する総合的な支援を専門に行うM&A専門業者(主に仲介者・FA)が顕著に増加する中で、特にM&A専門業者に関して、契約内容や手数料のわかりにくさ、担当者によっては支援の質が十分と言えない場合があるといった声が聞かれるようになったと述べられています。これを受けた主な改訂として、レーマン方式に関する留意点の明記と最低手数料の分布状況・適用事例の紹介、支援の質の確保・向上に関する記載、仲介契約・FA契約の締結前に重要な事項を記載した書面を交付して明確に説明すること、直接交渉の制限に関する条項の留意点の明記などが挙げられています(第2版は令和5年9月に策定)。
第3版との関係
第3版は、令和6年8月に中小企業庁が公表したものです。第3版では、第2版の策定後約1年を経て、仲介者・FAが提供する業務の内容・質と手数料に関する事項などが追記されています。第2版からの具体的な改訂ポイントについては、当サイトの別記事で整理していますので、あわせてご覧ください。
ガイドラインの構成:第1章と第2章
ガイドラインは2つの章から構成されるとされています。第1章は「後継者不在の中小企業向けの手引き」で、後継者不在の中小企業がM&Aを検討するための手引きとなる指針です。後継者不在の中小企業の経営者は第1章を参照することとされ、ただし、そこに記載されている内容はいずれも目安であり、実際にM&Aを進める際には個別具体的な事情を踏まえ、支援機関との相談の上で判断することとされています。
第2章は「支援機関向けの基本事項」で、中小企業がM&Aを検討・実行する際にサポートを行う支援機関にとって、基本的な事項を記載した指針となる部分です。支援機関は、第1章とあわせて第2章も参照することとされています。末尾には各種の参考資料が添付されており、後継者不在の中小企業及び支援機関は適宜これらを参照することとされています。
対象範囲:従業員承継と他の指針との違い
ガイドラインは、基本的に社外の第三者による事業の引継ぎを念頭に置いています。自社の役員又は従業員による承継(従業員承継)は直接の対象としていないものの、共通する部分については、ガイドラインの考え方に準拠した対応を期待するとされています。
また、M&Aに関する指針としては、経済産業省が令和元年6月に公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」もあります。ただし、これは経営者による企業買収(MBO)に関する指針を改訂したものであり、後継者不在の中小企業のM&Aを対象とする本ガイドラインとは異なる趣旨で策定された指針であるため、留意するよう述べられています。
まとめ
中小M&Aガイドラインは、後継者不在による廃業を防ぎ、中小企業が第三者へ事業を引き継ぐM&Aを適切に進められるよう、旧ガイドラインを全面改訂して策定された初版を出発点に、第2版では市場の拡大に伴う、M&A専門業者の契約内容や手数料のわかりにくさなどの課題への対応が、第3版では提供業務の内容・質と手数料に関する説明の追記、営業・広告に係る規律の明記や、仲介者において禁止される利益相反事項の具体化、最終契約に定めた事項の不履行等のトラブルへの対応が、それぞれ図られてきた指針です。中小企業向けの第1章と支援機関向けの第2章という二層の構成と、社外の第三者への引継ぎを念頭に置いた対象範囲を押さえておくと、各論点を読み進めやすくなります。
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- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p1(表紙:第3版・令和6年8月・中小企業庁))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p10(はじめに(第3版):第2版の策定時期・第3版の改訂趣旨))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p11-12(はじめに(第2版):初版策定後の動き・中小M&A推進計画・M&A支援機関登録制度・第2版の主な改訂))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p13(はじめに(初版):後継者不在の状況・廃業の影響・事業引継ぎガイドラインの全面改訂))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p14(はじめに(初版):従業員承継の扱い・公正なM&Aの在り方に関する指針との違い))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p15(本ガイドラインの構成等:第1章・第2章・参考資料))