中小M&Aのバリュエーション(企業価値評価)実務 徹底解説【非公式】
更新日:2026-07-25
本アプリ「中小M&A資格試験 対策」は運営団体非公式の対策アプリです。本記事は公式の過去問ではなく、中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」「中小PMIガイドライン」「専門人材スキルマップ」等に基づき作成した非公式の解説であり、教育・学習目的で提供しています。試験の実施団体とは一切関係ありません。
中小M&Aにおけるバリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)には、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチという3つのアプローチがあります。本記事は、それぞれの内容と特徴の比較、中小M&Aにおける実務傾向を一段深く解説します。
実際の評価額は、算定手法だけでなく交渉によって決まるものであり、本記事は一般的な制度・手法の解説にとどまります。個別の評価については、必ず公認会計士等の専門家にご相談ください。
バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)とは
バリュエーションとは、譲り渡し側の企業・事業の価値を評価することをいいます。中小M&Aガイドライン第3版は、中小M&Aでは、簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法(マルチプル法)等の手法により算定した価値を基に譲渡額を交渉するケースが多いとしています。
ただし、算出された金額が必ずそのまま中小M&Aの譲渡額となるわけではなく、交渉等の結果、算出された金額に数年分の任意の利益(税引後利益又は経常利益等)を加算する場合等もあり、当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となるとされています。
コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)とは
コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)は、主に評価対象会社の貸借対照表の純資産に着目して企業価値・事業価値を評価する方法です。代表的な手法として、(修正)簿価純資産法、時価純資産法があります。
マーケットアプローチとは
マーケットアプローチは、上場している同業他社や類似取引事例等から企業価値・事業価値を推定計算する方法です。代表的な手法として、市場株価法(評価対象会社の株式の市場価格等を基準に評価を行う方法)と、マルチプル法(類似する上場企業の株価や、類似する取引における成立価格をベースに一定の調整をした上で評価を行う方法)があります。
インカムアプローチとは
インカムアプローチは、将来期待されるキャッシュフローや利益から企業価値・事業価値を算定する手法です。代表的な手法として、DCF法(期待されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法)や収益還元法(期待される収益を現在価値に割り引いて評価する方法)があります。
三つの評価アプローチの比較
日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」(27ページ)を一部加工した比較表によれば、客観性は、コストアプローチ・マーケットアプローチが「優れている」とされる一方、インカムアプローチは「問題となるケースもある」とされています。
市場での取引環境の反映は、マーケットアプローチが「優れている」、インカムアプローチが「やや優れている」とされる一方、コストアプローチは「問題となるケースもある」とされています。
将来の収益獲得能力の反映は、インカムアプローチが「優れている」、マーケットアプローチが「やや優れている」とされる一方、コストアプローチは「問題となるケースもある」とされています。
固有の性質の反映は、インカムアプローチが「優れている」、コストアプローチが「やや優れている」とされる一方、マーケットアプローチは「問題となるケースもある」とされています。このように、各アプローチには一長一短があり、事案に応じて選択又は複数のアプローチを組み合わせて用いることが考えられます。
中小M&Aにおける実務傾向
中小M&Aガイドライン第3版は、中小M&Aの場合、時価純資産法で算定されるケースが多いとしています。
また、「相続税財産評価に関する基本通達(財産評価基本通達)」による取引相場のない株式の評価(純資産価額方式)は、時価純資産法に類似しており、税理士の業務知識でも対応可能であると考えられるとされています。
公認会計士によるバリュエーションの実施
公認会計士は財務・会計の専門家としてバリュエーションを実施しますが、実施に際しては、日本公認会計士協会の企業価値評価ガイドラインを踏まえ、事案に応じて適切に実施することが望まれるとされています。なお、複数の手法により算定した結果をそれぞれ比較検討するケースもあるとされています。
まとめ
中小M&Aのバリュエーションには、純資産に着目するコストアプローチ、類似する上場企業・取引事例に着目するマーケットアプローチ、将来のキャッシュフロー・収益に着目するインカムアプローチの3つのアプローチがあります。
客観性・市場での取引環境の反映・将来の収益獲得能力の反映・固有の性質の反映という4つの観点で、それぞれのアプローチに強み・弱みがあるとされており、中小M&Aの実務では時価純資産法で算定されるケースが多いとされています。
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よくある質問
中小M&Aではどのアプローチが使われますか?
中小M&Aガイドライン第3版は、中小M&Aの場合、時価純資産法(コストアプローチの代表的手法)で算定されるケースが多いとしています。ただし、複数の手法により算定した結果を比較検討するケースもあるとされています。
3つのアプローチのうち、どれが最も優れていますか?
単独で常に優れているアプローチはないとされています。客観性・市場での取引環境の反映・将来の収益獲得能力の反映・固有の性質の反映という観点ごとに、それぞれのアプローチに強み・弱みがあります。
算定された金額がそのまま譲渡額になりますか?
いいえ。算出された金額が必ずそのまま譲渡額となるわけではなく、交渉等の結果、当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となるとされています。
財産評価基本通達による評価とバリュエーションは同じですか?
相続税財産評価に関する基本通達による純資産価額方式は、時価純資産法に類似しているとされていますが、本来は相続税評価のための通達であり、目的が異なる点に留意が必要です。
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- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p44(バリュエーションの実務・簿価純資産法等))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p113(コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチの定義))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p113-114(三つの評価アプローチの一般的な特徴の比較表))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p119(中小M&Aにおける実務傾向・時価純資産法))
- 中小M&Aガイドライン(第3版)(p119-120(財産評価基本通達による純資産価額方式との類似性))